ころいぬころころ日和

好きなもののことをイラスト付きで書いたりしています。

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小さな男の子の不思議な出会いと少しの成長の物語『未来のミライ』感想

『時をかける少女』や『サマーウォーズ』などを手掛けた細田守監督の最新作。

予告を見た時から楽しみにしていたのですが、映画のレビューサイトを見るとまさかの低評価。迷ったのですが、観に行ってよかったです。

 前作までとは違って特に事件の起こらない、淡々とした日常が多く描かれた作品なので退屈だという意見があるのも納得ですが、私は好きな作品です。

 

 

あらすじ

ある日、やんちゃで甘えん坊な“くんちゃん”はお兄ちゃんになります。
生まれたばかりの妹に大好きな両親を取られ戸惑うくんちゃんは、駄々をこねては二人を困らせてばかり。
そんな彼の元に現れたのは、未来から来た妹のミライちゃんでした。

 

 感想

予告を見た段階では不思議な世界をドキドキわくわく冒険する『マジックツリーハウス』のような映画を想像したのですが、思っていたよりもファンタジー要素は少なめで、日常に不思議が混ざりこむような映画でした。過去作では『おおかみこどもの雨と雪』に近いと思います。

話の内容は確かに好みが分かれそうだと見ていて思いました。私は子供の視点ではなく、昔の自分を振り返りながら見て「こんなことしたなぁ」と楽しんでいたので、くんちゃんくらいの年齢の子が見たら全く違う感じ方になりそうです。自分に子供がいたらどんな感想を持ったか聞いてみたかったです。

 あと映像がすごく綺麗で、演出のことは詳しくないのでわかりませんが、不思議な世界に入り込む時の現実世界との切り替わり方はわくわくしましたし、不思議な女の子と雨上がりの町を二人で歩くシーンが特に印象に残っています。

それともうひとつ、ネタバレになるので下のほうに書いていますが、すごく魅力的で格好いいキャラクターが登場します。

 

好きだったところ

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感想◇ネタバレあり

「自分の系譜を辿り、家族の繋がりを知る」というのが今作の一番大きなテーマなのですが、それともう一つ、くんちゃんの成長も欠けてはいけない要素です。

おかあさんに構ってもらえなくて駄々をこねたり、片づけをしなかったり、上手くいかなくてそっぽ向いたり、そういった問題が起こると訪れる不思議な現象。犬のユッポが人間の姿になったり、未来のミライちゃんが現れたり、若いころのひいおじいちゃんに会えたりと。そうして今まで体験したことのないものや出会ったことのない人と話して、くんちゃんは少しずつ成長していきます。くんちゃんに出会った人たちは皆が皆くんちゃんを叱ったり諭したりしたわけではありません。話をして、一緒になにかをして、ただそれだけの人もいました。それでもその体験を通して自分で考えます。心の中にあるものを言葉にするわけではないので彼が何を考えているかは見ている人の想像でしかないのですが、不思議な体験を終える前とは違った思いをもって現実の世界に戻ってきたと思います。

成長は目に見えず あまりにも小さすぎてすぐにはわからないものですが、ひとつひとつの出会いは確かにくんちゃんに今までなかったものを与えます。

くんちゃんが不思議な駅で出会った未来のくんちゃん。彼は過去の自分を見て眉を顰めます。そうやって過去の自分を見た時にダメな部分を見つけ「こうしたらいいのに」と感じられるようになったことは、くんちゃんが子供から自我を持った大人へと成長した証です。

子どもは両親だけではなく多くのものに触れて新しいものを得て、そうして自分を知っていくんだと改めて思いました。

 

細田監督作品の男性キャラクターの魅力◇ネタバレあり

『時をかける少女』の千昭や功介、『サマーウォーズ』の佳主馬や理一、他にも数々の魅力溢れる素敵な男性キャラクターが細田監督の作品には登場します(もちろん女性キャラクターにも魅力的な子はいるのですが、今回は割愛します)私が今作で素敵だと感じたのは、くんちゃんが不思議な世界で出会う、青年時代のひいおじいちゃんです。 

端正な顔立ちで、声を担当されているのが福山雅治さん。これだけで心が惹かれてしまうのも無理はありません。細身ですが背中や腕を見るとしっかり筋肉がついており、渋い声や落ち着いた話し方も相まって、硬派で男らしいという印象を受けました。

ただ立って話しているだけでも目を奪われるのですが、バイクで走るシーンは延々と走り続けてほしいと思えるほどです。格好いい見た目だけではなく、くんちゃんのひいおばあちゃんへプロポーズした若い時のエピソードにも彼の魅力が詰まっています。

プロポーズの際「もしも自分が勝てたら」と挑んだかけっこ勝負ですが、戦争で足を痛めてしまったひいおじいちゃんには不利な勝負です。自分が勝てる勝負ではなくあえてかけっこを選んだのは、相手に断りやすい状況を作ってあげる、決して無理に受け入れてほしいわけではないという彼の優しさだったのではないでしょうか。 

ひいおじいちゃんだけでなく、家事に奮闘する優しいおとうさんや、クールに成長した未来のくんちゃんもそれぞれタイプは違うけれど、非常に素敵でした。おとうさんの声を担当されたのが星野源さんで、誠実で優しそうな雰囲気にぴったりでした。

気になったのはくんちゃんが幼稚園に登園する途中に通りかかった学生服を着た男の子。後ろを歩く女の子たちも意識するほどの美少年で、私も見た瞬間「格好いい・・・!」とその後の展開にわくわくしました。未来のミライちゃんの知り合いで、追いかけてきたのかな?などいろいろ妄想は膨らみましたが、特に物語には関わらずに彼の出番は終わりました。一瞬の登場ですが非常に印象的な子だったので、彼の物語があれば見てみたいです。

 

 

まとめ

笑って泣ける!というよりは、見終わった後に「よかったなぁ」とじんわり思う映画でした。

もしかしたら子どもは楽しめないかもしれませんが、親子で見に行って昔の自分がどうだったか、両親の子ども時代のこと、この映画をきっかけに話してみるのも面白いと思います。